Windows VPN のデスクトップ設定では、グローバルモードと分流のどちらを選ぶかが最初の分かれ道です。前者はマシン全体の通信を回線に通し、後者はルールに一致したリクエストだけを引き受けます。どちらが優れているというものではなく、違いはゲーム・業務ソフト・ブラウザで顕著に現れます。選び方を誤ると、ゲームの遅延が増えたり、社内ネットワークのログインがタイムアウトしたり、ブラウザが「プロキシサーバーに接続できません」と表示したりします。本記事ではシーン別に両モードを比較し、分流ルールの書き方、システムプロキシの引き継ぎと自動起動の設定手順、接続に問題が起きたときの切り分け順序を解説します。
グローバルモードと分流:2つのモードの実際の違い
グローバルモードは全通信モードとも呼ばれます。有効にすると、クライアントは本機のすべての送信トラフィックを回線へ流し、宛先が日本国内か海外かを判断しません。利点は挙動が予測できることです。どのアプリもローカルネットワークへ「漏れ」ず、問題の切り分けは1本の経路だけを見れば済みます。代償もはっきりしています。日本国内のサイトへのアクセスもノードを経由してから戻るため、遅延は回線の出口位置で決まります。LAN 機器(プリンター、NAS、画面ミラーリング)や社内システムもまとめて引き継がれ、そのままでは使えなくなることが少なくありません。
分流モードはルール表を上から順に判定します。直結ルールに一致した接続はローカルネットワークへ、プロキシルールに一致した接続は回線へ流し、どちらにも一致しないものは最後のフォールバックルールに委ねます。分流の効果はルール表の品質次第ですが、適切に管理されていれば、日本国内のサイトの表示速度はプロキシ未使用時とほぼ同じで、LAN 機器もそのまま使え、海外アクセスが必要なドメインとプロセスだけが回線を通ります。
さらに3つ目のダイレクトモードがあります。クライアントを終了せずにプロキシを一時停止するもので、OS の更新や LAN のデバッグなど、ローカルネットワーク環境をそのまま使いたい場面に向いています。
| 比較項目 | グローバルモード | 分流モード |
|---|---|---|
| 適用範囲 | すべての送信トラフィック | プロキシルールに一致した接続 |
| 日本国内のサイト | 回線を経由し、遅延は出口の位置で決まる | 直結で、プロキシ未使用時とほぼ同じ |
| LAN と社内ネットワーク | 既定で引き継がれ、手動での除外が必要 | 直結ルールを残せばそのままアクセスできる |
| ゲーム | すべて回線経由、UDP 転送の品質が快適さを決める | 海外サーバーは回線経由、日本国内サーバーは直結 |
| ブラウザ | システムプロキシまたは TUN に従う | 同上、ルールで決まる |
| メンテナンスコスト | 低い、ルールの管理は不要 | ルール表の管理が必要 |
| 向いている用途 | 一時的な利用、すべてを引き継ぎたいとき | 常用、ゲームと業務の併用 |
回線側の条件も両モードの結果に影響します。VPNPF の場合、回線タイプは IEPL 専用線・中継・直結をカバーし、地域と回線数は次のとおりです。
分流時は宛先の位置に合わせてノードを選ぶだけです。地域と回線タイプを1つずつ確認したい場合は回線ページをご覧ください。
分流ルールの書き方:ドメイン・プロセス・IP 帯の照合順序
分流ルール表は「上から下へ、一致した時点で終了」という方式で実行されます。順序は数より重要です。具体的なルールを前に、広いルールを後ろに置き、最後にフォールバックルールを1本残します。
3種類の照合がそれぞれ何を解決するか
- ドメイン照合:
DOMAINは単一ドメインを完全一致で、DOMAIN-SUFFIXはドメイン接尾辞全体を、DOMAIN-KEYWORDはキーワードで照合します。サイト、API、ソフトの更新サービスにはこの種類を使うのが最も管理コストの低い方法です。 - プロセス照合:
PROCESS-NAMEは実行ファイル名で判定するため、デスクトップソフトに向いています。ゲーム本体を直結、ブラウザをプロキシに設定するのは、ゲームと業務を1台で併用するときによく使う書き方です。プロセス名はタスクマネージャーに表示される名前と一致させてください。 - IP 帯照合:
IP-CIDRは宛先ネットワーク帯で判定し、主に LAN アドレス(10.0.0.0/8、172.16.0.0/12、192.168.0.0/16)や固定出口のサーバーを拾うために使います。
ルールの順序:具体的なものを先に、広いものを後に
rem 分流ルールの例:上から順に照合し、一致した時点で終了
IP-CIDR,10.0.0.0/8,DIRECT
IP-CIDR,172.16.0.0/12,DIRECT
IP-CIDR,192.168.0.0/16,DIRECT
DOMAIN-SUFFIX,company.example,DIRECT
PROCESS-NAME,game.exe,DIRECT
DOMAIN-SUFFIX,example-intl.com,PROXY
MATCH,PROXY
クライアントによってフィールド名や書き方は多少異なります。上の例は順序のイメージで、LAN 帯と社内ドメインを先に直結し、そのうえで回線を通したいドメインとプロセスを個別に指定し、最後にフォールバックを置いています。MATCH のようなフォールバックルールを先頭に置くと、後ろのルールは1つも効きません。
サブスクリプションを読み込んだ後、自分でルールを追加すべきか
サブスクリプションを読み込むと、クライアント付属のルールセットが一般的なサイトや地域分類をほぼカバーしているため、多くのユーザーが追加すべきは2種類だけです。社内ネットワークのドメインと IP 帯、そしてよく使うゲームや業務ソフトのプロセスです。ルールを変更したら、1つずつ検証することをおすすめします。対象のサイトやソフトを開き、クライアントの接続ログでその接続が直結と回線のどちらに一致したかを確認するのです。感覚で判断しないようにしましょう。
サブスクリプションの URL にはアカウントの認証情報が含まれます。公開グループや掲示板に貼らないでください。新しい端末で使う場合は、ユーザーパネルから再コピーし、古いテキストを転送しないようにします。
ゲームと業務ソフト:互換性の差はどこにあるのか
同じクライアントでも、ゲームと業務ソフトでは挙動がまったく異なることがよくあります。理由は、プロキシ設定の読み取り方が違うからです。
ゲーム:多くはシステムプロキシを読まない
主要なゲームクライアントと対戦の通信は独自の UDP チャネルを使うものがほとんどで、Windows のシステムプロキシ設定を読みません。つまりシステムプロキシだけを有効にしても、ゲームは回線をまったく通らず、プロキシ未使用時と同じ挙動になります。ゲームを回線経由にするには、クライアントが TUN または仮想ネットワークアダプターのモードを提供している必要があります。仮想アダプターがシステム層で通信を引き受け、ルールに従って回線か直結かを決めます。対戦の快適さは主に回線タイプで決まります。直結回線は経路が最短で、中継は入口と出口の間に1ホップ増え、IEPL 専用線は専用の経路を通るため夜のピーク時間帯でも安定します。日本国内のゲームは直結、海外のゲームはサーバー地域に合わせて地域ノードを選ぶのがおすすめです。
業務ソフト:社内ネットワークと会議がつまずきやすい2大ポイント
- 社内 OA、メールサーバー、コードリポジトリは社内ドメインや LAN の IP 上にあることが多く、これらのアドレスは必ず直結にしてください。そうしないとログインがタイムアウトしたり、認証画面が繰り返し表示されたりします。
- 会議とオンラインドキュメントは UDP と帯域の影響を受けやすく、通話中にノードを切り替えるとそのまま切断されます。会議の前に回線を固定しておくことをおすすめします。
- 一部の業務ソフトは独自のプロキシ設定を持ち、システムプロキシとは別に動作します。TUN モードでは通常、個別設定は不要です。システムプロキシモードで反映されない場合は、そのソフト自身のネットワーク設定を確認してください。
ブラウザ:システムプロキシに従うが、二重プロキシは避ける
Chrome と Edge は既定でシステムプロキシ設定を読み取り、Firefox は独自のネットワーク設定で個別に指定できます。ブラウザ拡張のプロキシとクライアントのプロキシを同時に有効にすると、リクエストはまず拡張を通ってからクライアントを通るため、速度が落ちたり一部のサイトが開けなくなったりします。どちらか一方だけにしておきましょう。
TUN モードは仮想ネットワークアダプターを作成するため、初回の有効化には管理者権限が必要です。一部のクライアントは TUN を有効にするとシステムプロキシを自動でオフにし、同じ通信が二重に引き継がれるのを防ぎます。クライアントを終了する前に画面から TUN をオフにしてから終了すると、ネットワーク設定の残留を1つ減らせます。
まとめ:ブラウザとシステムプロキシを読むソフトはシステムプロキシに、ゲームとシステムプロキシを読まないプログラムは TUN に任せます。両方を同時に有効にしても構いませんが、同じ通信が二重に引き継がれないようにしてください。
システムプロキシの引き継ぎと自動起動の設定手順
以下は Windows 10 と Windows 11 の共通的な画面に沿った手順です。クライアントによって項目の位置は多少異なりますが、考え方は同じです。
- まずクライアントでモードを選びます。普段は分流(ルールモード)を使い、「特定のアプリだけ回線を通らない」と調べるときにだけ一時的にグローバルへ切り替えます。
- クライアントの「システムプロキシ」スイッチをオンにし、Windows の設定 → ネットワークとインターネット → プロキシで、アドレスとポートがクライアントの表示と一致しているか確認します。よく使われるローカルアドレスは 127.0.0.1 で、ポートはクライアントが割り当てます。
- ゲームなどシステムプロキシを読まないソフトを引き継ぐ必要がある場合は、TUN / 仮想ネットワークアダプターモードを有効にし、システムのダイアログでドライバーのインストールを許可します。
- クライアントの設定で「自動起動」をオンにします。再起動後はタスクマネージャー → スタートアップタブで、クライアントが「有効」になっているか、システム最適化ツールやセキュリティソフトに無効化されていないかを確認します。
- 「終了時にシステムプロキシを復元」といった項目がオンになっているか確認します。クライアントが異常終了した後も、ブラウザが待ち受けていないローカルポートを指したままになるのを防げます。
- サブスクリプションを更新し、回線リストが最新であることを確認してから地域別にノードを選びます。ゲームのサーバーを変える前には回線を切り替え、ゲームの起動中には切り替えないようにします。
ブラウザに「プロキシサーバーに接続できません」と表示されたら、まずクライアントが起動しているか確認します。システムプロキシはクライアントが本機で開いているポートを指しているため、クライアントが終了するとポートも消えます。クライアントの起動を確認したら、Windows のプロキシスイッチをいったんオフにしてからもう一度オンにし、設定を再適用させます。
接続トラブル時の切り分け手順
以下の順に1つずつ確認してください。多くの問題は最初の3ステップで特定できます。
- ✅ まずクライアントが起動しているか確認します。システムプロキシはローカルポートを指しており、クライアントが終了するとポートは待ち受けをやめ、ブラウザにはプロキシエラーが表示されます。
- ✅ 次にモードを確認します。ゲームはシステムプロキシを読まないため、TUN / 仮想ネットワークアダプターモードでしか引き継げません。ブラウザは逆で、システムプロキシで十分です。
- ✅ DNS が接続と一緒に回線を通っているか確認します。
nslookupで名前解決の出口 IP を見て、それがまだローカル回線事業者のアドレスであれば、DNS リクエストがプロキシを通っておらず、DNS リークが発生しています。 - ✅ IPv6 を確認します。ネットワークによっては IPv4 と IPv6 を同時に配布しており、クライアントが IPv4 しか引き継がないと通信が回線を迂回します。アダプターの設定で IPv6 を一時的に無効にして結果を比べてみてください。
- ✅ サブスクリプションが最新か確認します。回線の調整後は古いノードが使えなくなるため、サブスクリプションを更新して再試行します。
- ❌ クライアントの実行中に Windows のプロキシ設定のアドレスとポートを手動で変更しないでください。両者が食い違うと、ブラウザのすべてのリクエストが失敗します。
- ❌ サブスクリプションの URL を公開しないでください。URL にはアカウントの認証情報が含まれており、入手した人はそのまま利用できてしまいます。
rem WinHTTP 層の現在のプロキシ設定を確認する
netsh winhttp show proxy
rem WinHTTP のプロキシを消去し、直接アクセスに戻す
netsh winhttp reset proxy
rem DNS キャッシュを更新する
ipconfig /flushdns
rem 名前解決リクエストの出口 IP を確認し、DNS が回線を通っているか判断する
nslookup -type=txt o-o.myaddr.l.google.com
Windows のプロキシ設定は2層に分かれています。ブラウザとほとんどのデスクトップソフトが読むのは「設定 → プロキシ」の WinINET 設定で、システムサービスと更新プログラムが読むのは WinHTTP です。2つは別々に設定されるため、トラブル時はそれぞれ確認すると回り道を減らせます。
結論:グローバルと分流がそれぞれ向いている場面
結論を3文にまとめます。常用するなら分流、一時的にすべてを引き継ぐならグローバル。ブラウザとシステムプロキシを読むソフトはシステムプロキシに、ゲームとシステムプロキシを読まないプログラムは TUN に任せます。自動起動はオンに、「終了時にシステムプロキシを復元」もオンにします。この2項目がプロキシ状態を制御できるかどうかを決めます。
結論:分流が既定の選択肢で、グローバルは切り分け用のツールです。ルール表では社内ネットワークと日本国内のドメインを先に直結し、そのうえで回線を通したいドメインとプロセスを指定し、最後にフォールバックを置きます。モード、TUN、自動起動の3つを一度きちんと設定すれば、ゲームと業務ソフトは同じ Windows マシン上で共存できます。